保釈について

保釈金イメージ 留置場情報

○○被告が保釈保証金○○〇万円を支払い東京拘置所から保釈されました。

「保釈」と言う言葉を報道などで耳にする事はよくあると思います。

では、保釈とはどのような制度なのでしょうか。

お金を国に納めて無罪にしてもらう?お金を国に納めて罪を軽くしてもらう?どちらも違います。

保釈とは?

保釈とは、刑事事件などで勾留され起訴されている被告人の身柄を勾留の効力を残しながら暫定的に執行を停止し釈放する制度です。

保釈は、起訴される前には出来ません。起訴された後に保釈保証金を納付する事や住居制限を受けたり、身元引受人を付けたりする必要があります。

また、保釈が認められても起訴されていて刑事裁判を受けなければならない立場なので裁判所の呼び出しには必ず応じなければなりません。

勾留決定の効力は残されている為、保釈が取り消されてしまうと再び被告人の身柄は拘束されてしまいます。

保釈の目的

なぜ刑事事件の被告人に対し保釈という制度があるのでしょうか?

刑事事件の被疑者や被告人には、無罪推定の原則というものがあり逮捕・勾留・起訴をされてもその時点では無罪推定の立場であり刑罰を課されることはありません。

刑事裁判によって有罪判決を下されて初めて刑罰が課されるのです。

逮捕・勾留によって身柄を拘束される事は、刑事罰ではなく逃亡のおそれがある場合や証拠隠滅のおそれがある場合、刑事手続きに支障をきたさないように被疑者や被告人の身柄を拘束するもです。

起訴され刑事裁判が始まるという事は、証拠も揃い捜査が終了していますので保釈という制度が認められています。

保釈が認められる要件

保釈は、刑事事件で起訴されている被告人に認められている制度ですが、すべての被告人すべてのケースで認められるものでもありません。

保釈には、刑事訴訟法で「権利保釈」「裁量保釈」「義務的保釈」というものにわけられています。

権利保釈

保釈請求する際、一般的に使われているのが権利保釈です。

権利保釈は、原則として保釈は認められると定められていますが、保釈を認められない場合について6つの理由が定められています。

権利保釈が認められない事由※刑事訴訟法89条

1.死刑、無期又は短期1年以上の懲役

2.過去に、死刑、無期又は長期10年を超える懲役・禁錮に当たる罪について有罪判決を受けたことがある場合

3.常習として、長期3年以上の懲役・禁錮に当たる罪を犯した場合

4.罪証隠滅のおそれがある場合

5.被害者や証人に対し、危害を加えるおそれがある場合

6.氏名又は住所が明らかでない場合

上記されている事由に加え逃亡のおそれがある場合、保釈が認められません。

保釈が認められない事由をすべてクリアしていても保釈が認められない場合が多々あり、これは罪証隠滅のおそれがあると判断されている事が多いです。

罪証隠滅のおそれには、被告人逃亡のおそれが含まれています。これは刑事裁判において被告人の証言も証拠となるため逃亡=罪証の隠滅と解釈されるからです。

裁量保釈

権利保釈が認められなかったという事は、不許可の事由にクリアできていなかった事ですが、裁判所が被告人の不利益などを考慮して保釈が適当であると判断すれば保釈が許可されます。これが裁量保釈です。

被告人の不利益とは

健康上の問題

被告人が生命に関わるような重い病気を患っていて、留置所や拘置所といった刑事施設では適切な医療を受けられそうもない時

懲戒解雇や退学

保釈が許可されず身柄の拘束が長期化すると勤務先から懲戒解雇されたり学生の場合、学校から退学処分を受けるおそれがある時

会社経営での経済的不利益など

被告人が会社経営している場合、早期に復職しなければ従業員や取引先など多方面に多大なる影響が及びそうな時

上記した事の他にも被告人の不利益を考慮して証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれがないことや他諸事情を含め裁判所が判断し裁量保釈が認められる場合があります。

義務的保釈

勾留による身柄の拘束が不当に長くなった場合、裁判所が保釈を認めなければならない。

しかし、実務上「義務的保釈」が適用されることは皆無と言っても過言ではありません。

保釈保証金

保釈保証金とは、一般的に保釈金と短縮され呼ばれています

制限住居を設定し身元引受人を立て保釈の請求をし裁判所が認めてもすぐに釈放される事はありません。決定した保釈金を支払わなければならないのです。保釈金を支払う前に釈放されることはありません。

保釈金の金額の決め方

保釈金の金額は、各案件毎に裁判所が決定します。

被告人の社会的立場や職業、どれぐらいの資産を持っているか、事件の性質や予想される刑の重さなどが考慮され保釈保証金が決定します。

保釈保証金は、裁判所の呼び出しにもれなく応じ、保釈時の条件(制限住居・共犯者、被害者との接触禁止など)を遵守し、刑事裁判が終結すれば有罪であっても無罪であっても即日返還されます。

もし、裁判所からの呼び出しに従わなかったり、保釈の条件を破ったりすれば、保釈保証金の一部又は、全部が没収されてしまいます。

ですから、保釈保証金は被告人が条件を守り逃亡しないよう、返還されなかったら困るという程度の金額が設定されます。

保釈後

保釈が認められ保釈保証金を支払えば釈放されます。

しかし保釈が認められたからといって自由に生活する事は出来ず、保釈が認められるにあったての条件を遵守する必要があります。

もし条件が守られなければ保釈が取り消され身柄を拘束され保釈保証金の一部又は全部が没収されてしまいます。

保釈の条件の例

  • 裁判所に提出した制限住居に居住する事
  • 召喚を受けた時には必ず定められた日時に出頭しなければならない(出頭出来ない正当な理由があれば前もってその理由を明らかにし、届け出なければならない)
  • 逃げ隠れしたり、証拠隠滅と思われる行動をしてはならない
  • 3日以上の海外旅行や国内旅行をする場合、前もって裁判所に申し出て許可を受けなければならない
  • 事件関係者に対し直接又は、弁護人を除く他の者を介して会ったり、電話や通信による一切の接触をしてはならない

など

コメント

タイトルとURLをコピーしました