初公判の日(第一回公判)冒頭手続【体験談45】

東京地裁 逮捕体験談

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保釈で釈放されてから2ヶ月程経ち、初公判(第一回公判)の日になった。

保釈中のこの2ヵ月間、事件の後片付けをしたり、運動をしたり、自分の好きな事を過ごしたり、これから先の事を真剣に考えてみたりと充実した生活を送ってきた。初公判の日まであっという間だった。

弁護士の先生と公判が開かれる予定時間より1時間30分前に地方裁判所の近くの駅で待ち合わせをしていた。余裕を持って自宅を出た。

余裕を持ち過ぎたのかかなり早く待ち合わせ場所に到着した。辺りを見回しても弁護士の先生はまだ到着していない。そりゃそうか。

待ち合わせ時間少し前に弁護士の先生が到着した。先生が「裁判所に向かいますか。」と歩き出したので私も歩き出し「打ち合わせはどこでするんですか?」と尋ねた。先生は「裁判所の1階に打ち合わせが出来る部屋がありますのでそこで」と。

歩きながら私の近況報告をしたり、先生は私が送ったメロンが美味しかっただとかたわいもない話をしながら地方裁判所に到着した。

裁判所に入り先生は、受付の所で何やらしている。私はその間、ロビーを見渡していた。結構、人が居るんだな、というのが地裁のロビーの印象だった。弁護士と何やら話し合っている人、友達とスマホで会話している人、家族でいる人、色々な人が居た。

そこに共犯関係にある仲間の一人が弁護士と地裁に入ってきた。お互い気付いたが保釈の条件もあり、アイコンタクトと会釈のみ。それだけ。久々に見た仲間の顔だったが元気そうで何よりだった、本当はは直接話したかったけど今は自由に話せる状況でもない。裁判が終わったら話しをしようと思った。

そうしていると、見覚えがある顔が二人。一人は、目を瞑って居眠りしていた。あー、あれは、私の担当刑事ではないけどこの事件を担当していた警視庁本部の刑事だな。と思い出した。私の方から彼らに近寄り挨拶をした。彼らは、何だかよそよそしくばつが悪いような顔で「おぉ。」なんだこいつら取調べの時の威勢はどこに置いてきてしまったんだろう。挨拶も出来ないなんてどうなんだろう?と思った。まあ、被告人という立場の人間にそんなこと思われたくもないか。正義の味方だもんね、おまわりさん?

この時間、この場所に彼らが居るって事は、私ごときの公判を傍聴しに来たのかな?それとも別の用事かな?まあ、どちらでも構わない。

先生がこちらに近づいてきて「行きましょう」と地裁1階にある会議室みたいな部屋へ。そこで今日の公判でどんな事が行われるのか、どんな質問をされてどのように答えればよいのかを教えてもらった。先生曰く大したことは聞かれないし、多分すぐ終わるだろうとの事だった。

打ち合わせも終わり弁護士の先生は外で一本電話してくると言って外に出て行った。すぐに戻ってきて「それでは行きますか」と言った。まだ私達の公判の予定時間まで30分ぐらいはあったのか、私達の公判が開かれる法廷へ向かった。

傍聴席の入り口から法廷へ入るとまだ私達の公判の前の前ぐらいの公判が行われていた。私達は空いている傍聴席に座り、裁判を傍聴した。その時の公判は、「大麻取締法(所持)」の事件の判決公判だった。淡々と進んで行く公判は流れ作業の様だった。

次の公判は「特殊詐欺」の事件だった。刑務官のような二人に連れられ別の入り口から入ってきた被告人だったのでどのような理由かは私には分らないけど保釈されていない被告人なんだなと思った。

いよいよ前の公判が終わり、私達の公判が始まろうとしていた。例の刑事二人組が傍聴席に入って来た。やっぱりかと。

傍聴席から直接被告人がすわるベンチまで移動してそこに座った。

検事が風呂敷みたいなものに包まれた大量の調書を運びながら入って来た。一番最後に裁判長が入ってきて、公判が始まる。

今の今まで何も思ってなかったはずだったが、この空気感に少しやられ緊張してきたのが自分でもわかった。

公判は全て併合されていたので共犯関係の仲間も揃っているし、全ての事件も一緒に進められる。

まず、「人定質問」から始まりそれぞれが氏名・生年月日・職業・住居(住所)・本籍地を答える。

次に起訴状の朗読。検察官が起訴状をつらつらと何の感情も持たず読み上げるのを聞いていた。

それが終わると裁判長が「権利告知」を被告人に対して行う。例の「黙秘権」がどうたらこうたら。終始沈黙していても話したくない部分だけ沈黙しても被告人の利益は損なわれないとかなんとか。

次に「罪状認否」があり、これは公訴事実に対して認めるか認めないか。公訴事実を認めた場合(自白事件)には、公訴事実について争いが無いので今後の審理は、主に量刑に関して争われることになり、公訴事実を否認した場合(否認事件)には、弁護側と検察側で公訴事実の内容や程度を争うことになる。

私は、公訴事実について認めた。他の共犯関係の仲間も認めていた。

ここで検察官が裁判長に「あと1件訴追がある予定なので」と申し出た。裁判長は「それはいつごろになりますか?」と。検察官は「○月○日ごろになります。」裁判長は手帳をみながら「わかりました。それでは、第二回公判は○月○日ごろでいいですか?」と検察官、それぞれの弁護士に予定の確認をしだした。

弁護士の一人が「その日は、どーたらこーたら」とか言い出したが検察官、私の弁護士も含む他の弁護士が了承したことで裁判長は「調整出来ませんか?」その弁護士は「調整します。」と。だったら最初から調整しとけよとか思った。

次の公判がこのように決まる事に少し驚きながらも法廷内に居る人全員が起立・礼をしてその日の公判は閉廷した。すごい早さに感じた。多分30分もかかっていないんじゃないかな。

退廷し、弁護士と少し打ち合わせ。次の公判の予定を確認し弁護士と別れた。

今日は、公判以外にもう一つ予定が入っていた。それは、検察に呼び出されていた件だった。昨日、担当検察官から電話があり夕方に私が検察庁に出頭することになっていた。

約束の時間はまだまだ先だったのでそこら辺をぶらぶらしてた。

そうしていると、検察官から電話がかかってきて「○時頃の約束だったけど前の取調べが終わったらすぐに出来ますけどどうしますか?勿論約束通り○時でも構いませんが?」と言ってくれたので私は「早くなればありがたいので前が終わったら連絡頂けますか?」と返答し検察官は「わかりました。終わり次第すぐに連絡します。予定は〇時頃になりそうです」と言った。

検察官の予定の時間に合わせて検察庁に徐々に近づいていくと電話が鳴った。「終わりましたのでいつ来てもらっても構いません」と、私は「すぐ近くに居るのですぐに伺います」と返答した。

検察庁につくと正面の玄関から入庁した。逮捕・勾留されていた時に何度もこの検察庁に連れてこられたが1階の正面玄関から入るのは初めてだった。逮捕・勾留されている時は、護送バスで地下駐車場に直接入りそこから地下にある「同行室」と呼ばれている檻の中で自分の検事調べの時を待つからだ。

正面玄関から検察庁に入り、警備員の人に「〇階の○○検事とお約束を頂いているのですが」と申し出ると荷物のチェックと空港にある飛行機に乗る前に必ず通るゲート式の金属探知機を通り中へ入りエレベーターで上階へ。

エレベーターを降りるとそこには、担当検事の事務官が待っていてスーツ姿の私を見て、あれ?印象がだいぶ違うね?いい感じ。と笑顔で○○検事の執務室に案内された。検察庁に入る入り口が勾留されていた時の入り口と違うと全然違う建物を歩いているように感じ、ああ、こうゆう造りになってるのか、と変に感心した。

検事の取調べは、前に組織犯罪対策部の刑事が作成した調書を基に進められ、検事がまた調書を作成し確認作業。取り調べの進め方は、基本的にすべて同じ流れだ。確認が終わりサイン・押印をし取調べ終了。

検事は「この件で○○さんは起訴しません。不起訴」と。

私は「わかりました。別件で相談があるんですけどいいですか?」と返答した。

検事は「どうしたんですか?」

私は「保釈の条件で困っている事があります。保釈条件で共犯関係者と連絡や直接会ってはならないみたいな事ありますよね?共犯関係の○○と仕事の事で会ったり話したり出来ないと困るんです。勿論合法的な仕事です。これをどうにか出来ませんか?お願いします。」と言った。

検事は「んー。この一連の事件の捜査は、今日で終わりだから裁判所に申請すれば通るんじゃないかな?自分の弁護士に相談して手続してもらったほうが良いよ。」とアドバイスをしてくれた。

私は「アドバイスありがとうございます。それと今までお世話になりました。」と言って検察庁を後にした。

第二回公判 証拠調べと論告・求刑【体験談46】に続きます。

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